敬称略雑記けいしょうりゃくざっき

狡知 02 「7月」

Burn Burn Burn

小山田圭吾

7月。私が持つ小山田圭吾への印象というのはほぼ概ね、まあまあ模範的な一般人と同じであったように思う。

「ウンコバックドロップの男」

後にそれはデマとして訂正されるが、小山田圭吾に関するあらゆる事前知識は全て吹き飛び、ただそういう印象だけが残った。 ミーム的にそういう醜聞があるのは知っていた。 なんとまあ強烈なと思いつつ人並みに誤解し憤慨しつつ、五輪はいかん!等とやっていたものだ。

私にとっての第一報は、「小山田圭吾が炎上している」ではなく「小山田圭吾が辞任した」というニュースだったように思う。 そこから、こんないじめや、あんないじめ、果てはなんだと、「AIにお勧めされるまま」、無意識により残酷な描写を求め、真実はとか高尚な意思を持ち得るはずもなく、様々なサイトを読み漁り義憤を溜めに溜めた。 覚えている限り、小山田圭吾がやったと明言する記事はむしろ少なく、小山田圭吾辞任をまず知らせ、「誰が」をぼかしていじめの描写を置く記事が多かったように思う。 (ものすごく)良く言えば中立、端的に言えば保険、1ページ目でいじめを描写し、続くページでいじめはなかった的なインタビューを載せるなんて高度な技を披露しているのもあったような気がする。

まあ何十年前かの話だしそうせざるを得ないよなと、本質ではない部分で妙に納得できた事を覚えている。 また、そういう保険を必要とした事自体、そして、「それをそのまま小山田圭吾がやっていた」としたら明確な犯罪行為なわけで、それなら既に社会的に抹殺され尽くしているだろうと、話半分までは行かないにしても少し間引いて見ていたように思う。

結局は、いじめを娯楽として消費していただけである。 そこに罪悪感はなかった。 五輪に関係した社会問題であると言えなくもない。 もっともらしい理由を付け、言葉を借りれば、エンターテイメントとして消費したのである。 当時の熱狂が過ぎた今、こう述懐する事も恥ずかしい。 「その様な事を嬉々として語っていた」「らしい」、事実確認や検証以前に、私にとってはそれだけで、小山田圭吾を悪と断罪するに足りた。 小山田圭吾が悪である限り、いじめを娯楽として消費する事に抵抗はなかった。

私の2021年の夏、それは、ウンコバックドロップの夏であった。 ウンコバックドロップがそれ以外の全てを粉砕した。 あと糞尿トライアスロン。

ウンコばっかだな

7月

2021年の7月。 コロナ禍による4回目の緊急事態宣言下、強行開催される東京2020オリンピック・パラリンピック。 不要不急の外出を避ける、三密を避ける、自粛を強いられる国民とは対象的に、某五輪スポンサー企業の真紅の宣伝車はDJの絶叫を伴いながら聖火ランナーを先導し、ブルーインパルスは空に五輪を描いた。

混沌であった。

ニュースを見れば、森喜朗の失言、佐々木宏の失言、ハンコ、FAX、満員電車、令和の時代になんとも昭和くさくてうんざりするようなトピックが並んでいた。 遅々として進まない現役世代へのワクチン接種に病床逼迫。 市民は苛ついていた。

異質な炎上

この当時の小山田圭吾バッシングとはどのようなものだったのだろうか。 私に取っての第一報は「小山田圭吾の辞任」である。 火勢としては一旦、下火になった辺りから見始めたという所だろうか。 彼によるものとされた非道を絶対悪として、正義の立場から批判する。 ほとんどがその手法を取っていたように思う。 中には五輪と絡め国益だなんだと騒いでいたやつもいる(私です

あまりに衝撃的な内容がもたらした当時の印象は、全方位に向けてどうしようも無く完璧な悪。 どこからどう叩いても、なんとなーく良いこと言っているように聞こえてしまう。 コロナ禍による自粛が長く続き、ネットが存在感を増していた事も災いした。 さらには五輪開催が迫ったタイミングである。

「取り敢えず全否定しなければ」という焦りが国全体にあり、どこか異様な雰囲気だった。

海外の目、だったのだろう。 日本の人権意識は昭和から更新されていない、それが露見する恐怖があった。 当時の気持ちを、恥を忍んであえて言わせて貰えば、同じ「日本人」として見られたくないという気持ちが確かにあった。 今になり冷静に考えれば、失笑物の稚拙なお気持ち。 言い訳だが、当時の「熱狂」はただ事ではなかった。

結果、拳は振り下ろされた。 正義は成されたっぽい、その程度で充分だった。

「何を言ってもいい」

何しろこの炎上、世論の合意があった。 小賢しい輩は政府公認のガス抜きだなとすら思っていた。 実際、プラットフォームにおいてはどうだったか。 言わずもがな。ラピュタか?という勢いである。 アフィリエイト界隈ではどうであっただろう。 五輪と小山田圭吾、果たしてどれほどの閲覧数だったか。 これで儲けている奴らもいるんだな、悪は断罪されたとか幼稚な達成感に酔いながら、どこか煮え切らない正義が残った。

かくして小山田圭吾は焼き尽くされ、その周囲までをも焼け野原とした。 乱暴にまとめれば、人権を侵害した者に対しては、人権を侵害してもいい。 その程度の感覚だったように思う。

…雑だね。


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